» 学会長あいさつ

日本農業経済学会の紹介

【会長挨拶 福田 晋】
福田 晋

 2020、21年度の日本農業経済学会会長に就任するにあたって、一言ご挨拶申し上げます。日本農業経済学会は、2024年に創立百周年を迎える、歴史と伝統のある学会であり、農業、農村そして食料問題等に正面から取り組んできた学会であります。その重責をひしひしと感じる一方で、コロナ禍という有事の最中に船出をすることへの不安を抱いていることも事実であります。2年間何卒よろしくお願いいたします。

 今般の新型コロナウイルス感染症問題は、世界的に感染症の恐ろしさを再認識させるものとなりました。感染症問題とは、図らずもグローバル社会の縮図であったわけです。パンデミックに至った経緯を考えると、当面はwithコロナを踏まえた「新しい生活様式」を定着させることが必要となります。そして、新しい生活様式は、農業・農村の在り方、食品の流通システム、そして食生活でも変化を求めることになるでしょう。数十年後に振り返ると、今日の事態は大きなエポックメーキングになると考えられます。Beyondコロナに向けて日本農業経済学会をリスタートさせる所存です。

 さて、学会の大きな財産として、2019年11月に『農業経済学事典』が丸善出版株式会社より刊行されました。2016年の夏に当時の盛田会長のもとで構想がスタートし、多くの編集に携わった会員、そして執筆くださった会員のご尽力で完成した日本農業経済学会の財産だと言って過言ではないでしょう。実は、この出版の話を最初に丸善から受けたのは私でありました。当時、日本育種学会が植物学に関する事典を編纂しており、それに続く第2弾として農業経済学を取り上げたいというものでした。育種学会の編纂担当者が九州大学在籍であったため、同社が私に話を持ち込んだということです。話を伺った私は、農業経済学を広く国民各層に知らしめる絶好のチャンスと考え、刊行することを念頭に、農業経済学事典刊行の重要性について丸善担当者に次のような私見のメイルを送付しています。

 「農業経済学は、応用経済学の一分野と理解されているが、他の応用経済学が経済学部に多く存在するのに対して、農学系大学に配置されることが多い。それは農学の知識も踏まえ、自然を対象とした経済学分野であるからこそである。その位置づけと多岐にわたる内容を多くの国民に一層周知させることは、単に学問的のみならず実践的意味合いからも重要であると考える。さらに、農業経済学は、経済学のみならず、農業経営学、農政学、農村開発学、農業財政学、フードシステム学、農業市場学、農村社会学、農業史等に至るまで包括する学問領域である。したがって、第1に、現代の農山村問題ひいては地方創生問題を解くカギを担っている。第2に、食料生産の基盤である農地の制度や利用に関しても言及し、産業としての農業の飛躍的発展の方向を展望する役割を担っている。そしてさらに、TPPに代表されるグローバルな食料問題と新たな食料産業問題に取り組んでおり、そこに食の安全性問題や信頼の制度、食育問題、栄養と健康問題、高齢者のフードデザート問題など今日的問題が顕在化している。このような多様な内容を網羅する農業経済学を事典という形で広く社会に問うことが、次世代の農村や農業や食料を考えるうえで重要であると考えられる。」というものです。

 これをうけて、丸善担当者と当時の学会事務局、学会役員等での編纂がスタートしたという経緯です。刊行された事典を見ると、まさに多様で広範な日本農業経済学会のすそ野の広さとそれぞれの分野での深掘りされた内容が掲載されており、読み応えのある事典となっています。

 このような農業経済学の広さと深さは、現在の日本農業経済学会構成員と活動状況にも表れています。すなわち、広義の農業経済学の中で、それぞれ専門分野の学会をベースとする活動をされ、そこでの専門的領域の学術研究を、精緻化された手法で分析するという形で深化させてくる傾向が、極めて強くなってきました。学問の発展と研究の深化はそれ自体望ましいことで、多くの会員が主戦場をその専門特化した学会に置き、より先鋭化した研究を重ねるようになりました。そのあたりの経緯は、前期の草苅会長の挨拶にもあった『創立90周年を迎えて存亡の岐路に立つ日本農業経済学会』という特別シンポジウムにおける、私の論考でも明らかにしているところです。

 そこでは、90年代以降、関連学会が急速に学術団体として登録され、農業経済学分野の学術的細分化が進んだことと、それら関連学会で構成する協議会の重要性について指摘しています。次に、農業経済学を農業経営学、農政学、農業史、農業市場学、フードシステム学等の総合化された学問体系としてとらえるならば、その中の個々の、細分化し専門化された領域が学会として発展することは望ましいことであり、広義の農業経済学の領域が精緻化されるとともに、研究領域によっては学際化を迫られている傾向についても指摘しています。そして、これらの学会活動は相互に補完しあうべきであり、日本農業経済学会はCenter of Agricultural Economics との位置づけをしていきたいと結んでいます。

 このような観点は、農学というところからも広く要請されています。私がJSPS学術システム研究センターの農学専門調査班研究員をしていた当時、科研費の新たな特設分野研究として「食料循環」、「次世代の農資源利用」の立ち上げに関わりました。現代社会に生じている課題の解決を目指して、広く農学やそれを超えた領域との異分野融合・学際研究を展開しようというものでした。それぞれの領域で精緻化・細分化された先端の分析を踏まえて、どのように総合化して課題の解決につなげるかという点が問われていたと思います。そこでの農業経済学の期待というものは、大変大きなものでした。これから一層、その役割が社会で期待されていくと思います。

 アカデミアとして、専門化した領域の精緻な理論・実証分析を重ねていくことは極めて重要な私ども研究者の役割です。そして、日本農業経済学会の役割は、広義の農業経済学をそれぞれの学会フィールドで担う会員が集い、相互に議論し、新たな農業経済学を作り上げるという総合の場であると捉えています。そのためのプラットフォームとしての役割を一層重要視し、有意義な学会活動を展開し、活動の場を提供していきたいと考えております。

 日本農業経済学会が抱える固有の課題は山積しており、一つずつクリアしていく必要があります。さらに、新しい時代に向けてプラットフォーム機能を強化しつつ、日本農業経済学会が一層発展していくために、会員諸氏の絶大なご支援とご協力を得ながら、学会長として微力ながら貢献していく所存です。

 

トップページ
学会紹介
学会長あいさつ
会則・規則・細則
論文投稿規定
刊行物
大会情報
諸会議議事録
役 員・委員会委員
表 彰
会員登録
学会事務局
連絡先は学会事務局連絡先
〒104-0033
東京都中央区新川2-22-4
新共立ビル2F
株式会社 共立内
日本農業経済学会事務局

電話 03-3551-9896

FAX 03-3553-2047

Email office<@>aesjapan.sakura.ne.jp
※Eメールは、〈〉をはずして送信してください。

英文サイトへ

英文サイトは
こちらからご覧頂けます。

ご入会はこちらのページで

学会への入会をご希望の方は
上記フォームから申込み可能です。

会員情報修正ページへ

住所等の変更があった方は上記
フォームから修正をお願いします。
※入会に関する詳しい情報は
「会員登録のご案内」から
ご確認下さい。

「単語をクリックすると、その単語が付箋(=タグ)として張られた記事が一覧表示されます。大きいものほど使用頻度が高いタグです。